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2009.7.02(火)               文:田島貴男    
     
     

 オリジナル・ラヴのツアー、HOT STARTER 09、名古屋、大阪、東京のク
ラブクアトロのライブを大盛況のうちに終え、残すは7月15日のAXのみと
なりました。ライブに来てくれたみなさん、すげえ盛り上げてくれて本当に
ありがとうございました!!
  いやあ楽しいし難しいし嬉しいし勉強になるし、もういろいろな感情やら
情熱やらが渦巻いて乱れて、やっぱりライブってすごいなあと思っています。
 今回はギター2本とベース、ドラムの4人編成。この編成はぼくにとって
原点回帰であり、かつ新境地なのですが、実際にツアーが始まって、4人編
成になったことによって満ちあふれだしたこの「バンド感!」がとても刺激
的です。
 音楽を演奏することの、なにが、どこがかっこいいのかを、この4人バン
ドはぼくに再確認させてくれます。上手く行った時も、駄目だった時も、元
気な時も、疲れている時も、すべてがバンドサウンドとして生々しく躍動し
ていて面白いです。
 4人のバンドサウンドは、自分の故郷というかお里というか、そういうな
にか自分のミュージシャンとしての出自のようなものを思い出させてくれま
す。
  渋谷AXも頑張ります!!よろしく!!まだ興奮してるみたいで、ビックリ
マークがいっぱいついちゃってます!!

 

 

 

   
     
2009.6.26(金)               文:田島貴男    
     
     

 HOT STATER 09 がいよいよ始まります。今回は4人編成のバンドスタイ
ルですが、たぶん今までで一番オリジナル・ラヴらしいライブになると思い
ます。オリジナル・ラヴにしかできない音楽を、みなさんに披露できると思
います。ぼくにって、新境地であり、原点回帰のライブでもあります。
 オリジナル・ラヴが提案する、一風変わった「ロック」を、みなさんぜひ
聴きに来てください。4人のミュージシャンたちが奏でる「音楽」を聴きに、
オリジナル・ラヴのライブに来てください。ライブ会場でお会いしましょう!

 

 

 

   
     
2009.6.25(木)               文:田島貴男    
     
     

 頭の中がツアーのことでいっぱいになってきた。あれを忘れちゃならない、
これをメンバーに伝えなきゃならない、などね。とくに緊張してピリピリし
ているという自覚は無いのだけど、みょうに朝早く起きてしまったりして、
やっぱり自分の気付かないところで、無意識的に緊張してきているのかもし
れないな。
 リハーサルも大詰め。今日も頑張らんと。 

 

 

   
     
2009.6.24(水)               文:田島貴男    
     
     

 ツアーまでいよいよあと僅かに迫った。連日のリハーサルでちょっと疲れ
ているけれど、なかなかかっこいいツアーティーシャツも出来上がってきた
し、ライヴの形もほぼできあがってきて、気持ちも盛り上がってきた。みな
さんに早くライブで会いてえよ!
 バイクの運転ではよく、手で、ハンドルで、上半身で運転するのではなく、
腰で、下半身で、あるいは足を載せるステップで運転しろと言われる。上手
い人ほど、手や肩になにも力が入ってなくて、腰や足でバイクを操作してい
る。初心者ほど、ハンドルをこじろうとして手や腕、上半身が力んでしまう。
そうするとバイクが自然に曲がってゆこうとするセルフステアという機能を
殺すことになってしまう。
 音楽の演奏も、手で、腕で、上半身で演奏するのではなくて、下半身で、
腰で演奏するのではないかというのが、ぼくの最近の考えだ。上半身で演奏
するほど、無理に力んで自然なグルーヴの流れを乱してしまう。黒人のミュ
ージシャンがよく、非常にリラックスしながらものすごいグルーヴを出して
演奏しているシーンを見かけるが、あれは手で、腕で、上半身で演奏してい
るという意識よりも、腰で踊って、足でリズムを取って下半身で演奏してい
るようにぼくは思う。
 それからリズムの感じ方も、一拍一打というように細かいタイムに意識を
集中するのではなくて、もうちょっと大まかに感じたほうが良いのではない
かとぼくは思っている。たとえば1小節ごととか、4小節ごととか。一拍一
打に意識を集中すると、気持ちよいパワーというのではない不快に力んだ演
奏になるし、ミスをするとグルーヴがそこで途切れてしまう。バイクを運転
するとき、目線をすぐ手前の近くに置くよりも、道の先のほう、遠くのほう
に持っていったほうがバイクが安定するのと同じで、ビートの一拍一打に意
識を集中するよりも、らせんを描くように一小節や数小節の流れでメンバー
全員でリズムを感じて盛り上がって ゆくほうが、グルーヴが強くなるのでは
ないかと、ぼくは思う。

 

 

   
     
2009.6.23(火)               文:田島貴男    
     
     

 オートバイで峠を運転していて、そしてリハーサルスタジオでバンドで演
奏していて、オートバイの運転と音楽の演奏の似ているところに、今日あら
ためてまた気が付いた。それは力の配分や意識の持って行き方などについて
なのだけれども。芸というものの奥の深さを、いつまでたっても知ることに
なるんだ。むつかしいけれども、面白い。
 ぼくは30代まで、ほとんど音楽を介した知り合いや友達ばかりで、言わ
ば同じ畑の人たちとばかりと付き合っていたのだけれど、ボクシングやオー
トバイという趣味などを介して、狭く浅くだけれども違う畑の人たちに出会
って、それは自分にとってちょっとラッキーだったなあと思っている。世の
中には、いろんな人が居るけれども、町に右往左往する人々に紛れて、思わ
ず尊敬してしまうような人が居るんだってことを知ることもできた。そして
最近少しだけれども、物事を以前とは違う角度から見ている自分が居る。同
時に、自分の至らないところ、もっと頑張らねばならないところも見えてき
た。そして同時に、作品、作家について、見えてなかった部分もうっすらと
見えてきた。
 違う畑を覗く価値はあるのだと最近気が付いて、もうちょっと早く気が付
けば良かったのだろうけれども、やっぱり今だから気が付けたのかなとも思
っている。それが自分という人間だったのだ。なんとなくそういうふうに思
えて、そういうことを今日は書いた。

 

 

 

   
     
2009.6.22(月)               文:田島貴男    
     
     

 HOT STARTER 09の全体リハーサルが始まった。いやーやっぱりカッコイ
イ!いまのところ狙い通り進んでいる。そうそう、そういえばこういうバン
ドだったじゃん!という感じ。なんだこの80'sの香りは。すごい新鮮だし、
まるで新しいバンドを始めたみたいだ。初心に返るテーマは実際にバンドで
音を出してみて、思ってた以上に、サウンドに、ムードに如実に表れていて
自分でも驚いている。ギター2本の4人バンドの編成は、オリジナル・ラヴ
の個性を、実は一番主張できる編成なのだと思った。仲間と集まって音楽を
セッションすることがやっぱりぼくは一番好きだな。面白いライヴになりそ
うです。とか言って期待をあおればプレッシャーなのですが、まあ頑張りま
す!

 

 

 

   
     
2009.6.19(金)               文:田島貴男    
     
     

 ホームセンターへ行く。誘惑に駆られないように他の棚をなるべく見 ない
ようにして、買わなければならないモノを買い、さっさと足早に ホームセン
ターをあとにする。いつも何かしら、余計なモノを買ってし まうからさ。
 バイク用のウインドブレーカーを買った。山のほうに走りにいくと革ジャ
ンを着ていてもまだなお寒いときがあって、ウインドブレーカーが あると便
利だと思っていたんだな。
 ツアーが迫ってきてなんとなくソワソワしているのか、今日はそんなこと
くらいしか書く気になれないや。
 さあて、今日もギターと歌の稽古だ。

 

 

   
     
2009.6.18(木)               文:田島貴男    
     
     

 ツアーがいよいよ迫ってきた。毎日練習していてすこし眠い。
 HOT STARTER 09 は6 月28 日からスタートします。渋谷クラブクアト
ロのチケットはおかげさまでソールドアウトになりました。みなさんありが
とうございます!一生懸命やります!
 さっき「初期のRCサクセション」をバスの中で iPod で聴いていて笑っち
まった。きっとまわりのお客さんに聞かれたな。清志郎さんの「ジョーク」、
「軽み」がうらやましい。テレビでいっしょに共演した時、ぼくはただ一生
懸命歌っていたが、清志郎さんは一生懸命歌いながら、一生懸命ふざけても
いた。
 清志郎さんの自転車くらい深く、ぼくはオートバイにハマれるのか。オー
トバイに興味を持ってから、やがて自転車に興味を持つのではないかという
予感がずっとしているが。
 二輪車と詩は、ひとり考え、ひとり頷く面白さを知った者にとっての、身
近な道具のようなモノだ。

 

 

   
     
2009.6.17(水)               文:田島貴男    
     
     

 ボクシングの試合に行って来た。いやあ最高だったな。感動してしまった。
 昨日はリングサイドで4回戦ボーイの最初のほうの試合からB級ボクサー、
A級ボクサーと、試合が進むに連れてランクがあがっていく様子が観れてラッ
キーだった。リングサイドは試合を下から見ることができるから、パンチがど
こにどうゆう風に有効にあたっているか、ボクサーの表情や気配、パンチの威
力とかが分かって、生のボクシングの迫力ある試合を十分に楽しめるんだ。
 4回戦ボーイの試合はいかにもガチンコファイトという感じで、試合時間が
短いから、1ラウンド目からばんばん攻めていく感じが観ていて面白い。
 アメリカで活躍していて日本でのデビュー戦だった女子ボクサーの丸山さん
は判定で僅差で負けてしまったけれど、5年のブランクを感じさせない試合だ
った。惜しかったなあ!パンチは相手に正確にヒットしていたし、勘も戻って
きただろうから今度は絶対勝てるはず!頑張ってほしいなあ。
 B級ボクサーの試合となると駆け引きが含まれてくる。6ラウンドの中でど
うやって試合を進めるか、いつ、どの瞬間にラッシュするかなどの攻防がまた
面白い。
 A級ボクサーの試合となると、パンチの迫力もボクサーの精神的な鍛えられ
方もグッと凄みが増している感じで、息をのむような瞬間が試合に現れてくる。
むかしの武士の一対一の決闘は、こんな雰囲気だったのではないかと思えるよ
うな真剣勝負。パンチの威力も強いから一瞬のミスも許されない。一発でKO
の可能性だってある。 ポーカーフェイスで相手を睨み合うボクサーの気迫に、
観ているほうも緊張する。
 ボクシングライセンスを取得するのもすごい大変なのに、その先に日本ラン
キングがあって、世界ランキングがあって、ライセンスを取ったあとにもボク
シングには果てしなく長い道のりがあるんだなあ。
 山川和風君とフィリピンのチャンピオン、アーニエル・ティナンパイの試合
は素晴らしかった。1ラウンド目に両ボクサーがリングで打ち合いを始めたと
き、ティナンパイのすごいパンチ力に会場がオーッとどよめいた。これをまと
もに食らったらヤバいことは会場で観ている人たちみんなが気づいたはずだ。
ボクサーにはパフォーマンスで相手を挑発したり脅したりするようなタイプと、
まったくポーカーフェイスを崩さないタイプがいるが、ティナンパイはまった
くポーカーフェイスを崩さず、ただ殺気だけが漲っているというなにかヤバい
雰囲気を持った男で、パンチを山川君に積極的に打ってくる1ラウンド目は、
ぼくはリングサイドで観ていてゾッとしたのだが、山川君はそれでも果敢に挑
んでいった。2ラウンド目から山川君のボディがティナンパイに少しずつ決ま
っていった。パンチをボディに集めて隙ができたところへジャブ、フック、ス
トレートを当てに行く、下から上への戦法が効き始め、試合が進むにつれティ
ナンパイのポーカーフェイスが崩れてきて、疲れも見えてきて、明らかにボデ
ィを嫌がっている様子がうかがえた。山川君がティナンパイに次第にラッシュ
を仕掛ける場面が増えいって会場は大盛り上がり。そして8ラウンドを終えて
ついに山川君が判定で勝利した。山川君はガッツポーズして泣いて喜んでいた。
ぼくもグッときてしまった。いやあ、いい試合だったな。後楽園をあとにして
ひとりニヤケがとまらなかった。山川君の東洋チャンピオンヘのチャンスはこ
れでまた現実的なものとなってきた。ぜひとも頑張ってほしいです!

 

 

   
     
2009.6.16(火)               文:田島貴男    
     
     

 オタマジャクシやカエルが降ってきている町のニュースをたびたび耳にする
から、そのことを書こうかと思ったら、ほぼ日で糸井重里さんも書いてて、カ
ブっちゃうのだけどさ。そうそう、「マグノリア」という映画のなかで、カエ
ルが降ってくるシーンがあるんだよな。
 ずっと前に「小説、旧約聖書」という本を読んで、これは旧約聖書を小説ふ
うに読みやすくしたような本なのだけど、この中にやっぱりカエルが天から降
ってくる話があってさ。ぼくは「マグノリア」を観たとき、旧約聖書のその話
を引用して、なにか暗示させるような表現しているのかなと思ったのだけどさ。
 その旧約聖書の中の話は、確かぼくの当てにならない記憶では、ある地域の
住人が神様の怒りをかい、カエルをそこら中に大量に降らされて町がカエルで
埋め尽くされてしまい、住民たちはカエルに押しつぶされてしまった。しかし
そのすぐ近くのごく狭い地域に住む人たちは神様の怒りをからなかったので、
そこだけカエルが降らなかった。というものだったんじゃないかな。何千年も
前のいい伝えだから、大げさな脚色とか当てにならない予測とかが入ってしま
っているのだろうけどさ。
 こういったことはずっと大昔からたまにあったのかもしれなくて、いまも原
因がよく分かっていないことのひとつだということなんだな。

 

 

   
     
2009.6.15(月)               文:田島貴男    
     
     

 昨日は年配のベテランの人たちとツーリングに行って来た。秩父小鹿野町か
ら志賀坂峠、ぶどう峠、クリスタルライン、柳沢峠、松姫峠、大垂水峠という
鬼の峠巡りフルコースだった。うまい人がぼくのペースに合わせて先導してく
れたので、くったくたになったけれど、バイクの乗り方にまた一つ大きな発見
があって、収穫のあるツーリングだったなあ。東京はだいぶ暑くなってきたけ
れど、山の中はまだ寒くて、革ジャンに革パンで行ったのに身体が冷えて、途
中から合羽を着て走った。初夏の青い山の風を浴びて食べた山菜天ぷら料理は
格別だったなあ。
 今日は木暮とツアーの打ち合わせとリハーサルがある。ギターと歌とバイク
の日々だな。

 

 

 

   
     
2009.6.12(金)               文:田島貴男    
     
     

 ぼくはピチカートファイブに参加するまで、譜面を書いたことがなかった。
その前まで、オリジナル・ラヴでバンド練習するときには、デモテープを作っ
てメンバーに聴いてもらい、演奏の仕方や構成などはしゃべって伝えていた。
コードネームもろくに知らなかったのだが、ただ和音の名前を知らなかっただ
けで、ポップスやジャズで使われるほとんどの和音は知っていた。ピチカート
ファイブに参加して、簡単でもいいから構成譜ぐらいないと、レコーディング
という作業にかなり支障をきたすということを知り、身の回りにいたセッショ
ンミュージシャンの人たちから構成譜の書き方を教わった。その人たちの教え
方は多分良かったのだろうが、自分の憶え方が悪かったため、今でもぼくのコ
ードネームの書き方は間違っているところがあるのだが、バンドで練習するに
は支障を来さない程度なのでそのままになったいる。
 当時ぼくの身の回りにいたセッションミュージシャンから、おまえの曲は、
コードネームにいっぱい数字が書いてあって、いちいち小難しいテンションコ
ードが入っていて、すげえ演奏しずらいとよく言われた。ぼくは高校時代、マ
イルス・デイヴィスなどのジャズやドビュッシー、ガーシュウィンなどのクラ
ッシックから聴こえてくる和音が好きで、ピアノは弾けなかったし身の回りに
なかったのでギターでコピーして、自分の曲に当てはめていた。いわばぼくの
曲は、ビートルズであったり、パンク・ニューウェーブのギターバンドの楽曲
に、ジャズのテンションコードを半ば無理矢理押し込めたような曲調だった。
当時、XTCというイギリスのバンドがそういう曲の作り方をしていて、ぼくは
このバンドの大ファンで、真似をしたかったのだが、なかなかああいう風には
ならず、なんとも言えない曲調になっていた。
 ピチカートファイブに入ってぼくは突然、一流スタジオミュージシャンにデ
ィレクションをしなければならなくなった。このあいだ楽譜の書き方を初めて
知ったような小僧が、ベテランのミュージシャンに指図するのは難しかった。
ピチカートファイブのレコーディング現場では、基本的に曲を作った人がその
曲のプロデューサーであり、その場を仕切らなければならないというようなや
り方だった。それまでギターバンドの楽曲しか作ったことのなかった自分が、
ピアノやパーカッション、ホーンセクション、オーケストレーションのイメー
ジを持たなければならなかったので、大変だったが、小西さんや慶太郎さん、
アレンジャーの長谷川さん、ディレクターのマイケルが手伝ってくれて、なん
とか付いてゆくことができた。
 「夜をぶっ飛ばせ」はオリジナル・ラヴがライヴハウスでやっていた曲だっ
たが、この曲をピチカートファイヴでやろうということになり、歌詞を小西さ
んが書いてレコーディングした。前にも書いたかもしれないが、この曲で初め
てぼくはホーンセクションのアレンジをして、この時のことは今でもはっきり
憶えているほど印象深い体験だった。当時カーティス・メイフィールドの音楽
に出会ったばかりだったぼくは、この曲にカーティスのようなホーンセクショ
ンを入れたいと思い、小西さんに相談すると「田島君自分でアレンジしてみな
よ。ドン・セベスキーのアレンジ本に音域とか書いてあるからさ。大丈夫、田
島君ならきっと出来るよ。それじゃあねー。」と言って帰ってしまった。当時
ぼくはトランペットとテナーサックスは B フラットに移調して記譜しなければ
ならず、トロンボーンはヘ音記号で書かなければならないことさえ知らなかっ
た。まして、オタマジャクシなど、ほとんど読みもしなければ書いたこともな
かったので、「夜をぶっ飛ばせ」ともう一曲、計2曲のホーンセクションのレ
コーディングが次の日の13時からに迫った前日の午後7時から、ぼくはスタ
ジオに泊まり込んで死にものぐるいになった。朝方の5時をまわった時点で、
もう駄目だ、あきらめようと思ったのだが、根性で持ち直し、レコーディング
スタートの一時間前にようやくできあがった。その後30分くらい寝て、レコ
ーディングが始まった。初めて書いたぼくのホーンセクションの譜面が、あま
りにも間違いだらけだったので、トランペットの数原さんとサックスのジェイ
クさんは笑っていた。「おい、これはどういうふうに吹くんだ、ちょっと口で
やってみ」とリーダーの数原さんに言われて、ぼくが「テレレレッテッテーテ
ーテ、テレレレッテッ、です!」と言ったら、「オッケー」と言って数原さん
はなにやらサックスとトロンボーンの人と打ち合わせをし、演奏が始まるとも
う完璧なのだった。つまり徹夜して書いたぼくの譜面はさっぱり使い物になら
なかったのだが、レコーディングはばっちりだった。数原さんのホーンセクシ
ョンはその後も何度かぼくのレコーディングを救ってくれた。素晴らしいプレ
イヤーだ。
 それ以降、オリジナル・ラヴの全部のアルバムの、6、4、2、2 のストリン
グスオーケスラやホーンセクションなど、ほとんど全部のアレンジを、プロデ
ューサーやアレンジャーは立てず、ぼく自身がやってきた。それは、あのとき
小西さんが「田島君大丈夫。自分でアレンジ出来るよ。じゃあねー。」となん
の根拠もないような感じでぼくに言って帰ってしまったから、やれるようにな
ったんじゃないかなと思うんだな。

 

 

 

   
     
2009.6.11(木)               文:田島貴男    
     
     

 このあいだ並んでしまいました。長い長い行列に。ポール・マッカートニー
は並ばないかもしれないけれど、オレは並ぶんだな。
 朝7時に家を出て、開店の2時間以上前にそのバイク用品量販店着いたから、
オレが一番かと思いきや、すでにものすごい長い行列ができていて、さながら
大晦日の川崎大師のような大変な盛り上がりでさ。一番前の人は前の日の午後
4時頃から並び始めて泊まり込みだったらしい。
 なにを買いに来ていたのかというと、バイク用のETC車載器。5万台まで限
定で国から助成金が出て、かなり安く買えるっていうんで、みんな買いに走っ
て品数が極端に減って入手困難な状態のなか、その日はバイク用品量販店が確
保した車載器の発売日だった。集まったバイクのナンバーをみると東京、千葉、
さいたま、群馬はもちろん飛騨や 京都のナンバーまであって、かなり遠くから
買いに来た人も多かったようだ。
 開店の一時間前から整理券が配られ受付が始まって開店後一時間もたたずに
売り切れてしまったらしい。すごい盛り上がりだったからテレビでニュース中
継されるかなと思いきや、されなかったね。
 オレは普段はめんどくさがりだから行列に並ぶくらいだったらさっさとあき
らめるタイプだが、バイク用ETCは欲しかったんだな。これで料金所でいちい
ちグローブを外して時間を食って、後ろの車の人をイライラさせたりせずにす
む。それにしても、行列に並んでみるとけっこう見ず知らずの人と話したりし
てさ。なんかちょっと面白かったりするんだよな。

 

 

 

   
     
2009.6.10(水)               文:田島貴男    
     
     

 このあいだ小さな奇跡がぼくに起こってさ。
 バイク駐車場へ向かう途中、いつもは注意して見たりしない民家の垣根の上
になんとなく目が行って、そこに見覚えのある黒いモノが置いてある。手に取
ってみるとそれはハーレーダビッドソンの夏用バイクグローブで、どう見ても
自分が使っているもののようなのである。ぼくのバイクグローブは前日にヘル
メットといっしょにバイク駐車場のロッカーに鍵をかけてしまったはずで、そ
れが二、三百メートル離れている民家の垣根の上に、あたかも異次元のトンネ
ルを通ってワープしたかのごとく置いてあったのである。ぼくの使っているバ
イクグローブにそっくりな誰かさんのものである可能性も拭いきれなかったが、
とりあえずそれを持ってバイク駐車場へ行き、ロッカーを開けたら、やっぱり
垣根の上に置いてあったほうのグローブがなかった。
 ぼくの推理では、前の日、雨の中をバイクで帰ってきたぼくは、バイク駐車
場のロッカーにヘルメットとグローブをしまって鍵をかけ、着ていた雨合羽は
濡れていたので部屋で乾かそうと思い、束ねて小脇に抱え、家に帰ったのだが、
その雨合羽の端っこに、ロッカーにしまったと思ったグローブの片方が引っか
かっていて、ぼくはそれに気づかず、バイク駐車場から二、三百メートル歩い
た時点でグローブが道路に落ちた。次の日の晴れた朝、散歩していた地井武男
ふうのたいそう気のいいおじさんがそこへ通りかかり、落ちていたグローブを
拾い上げて、「なんだこれ気味悪いなあ」とかつぶやきつつも、地べたにあっ
て何者かに踏まれてしまうより、垣根の上に置いておくか、とグローブをそこ
へ置いてくれたのである。なんたる町の人間の気の優しさよ!その数時間後に
グローブの持ち主である人物がそこへ通りかかり、「あれ、なんか見覚えのあ
る黒いものが置いてあるな」となったのである。なんたる小さな奇跡!このよ
うな奇跡が自分に起こるなら、どうせなら音楽の分野で 起こってほしかった。

 

   
     
2009.6.9(火)               文:田島貴男    
     
     

 暑くなってきたから、風のない日にジムに行くと、息が上がってしまう。汗
みどろになって、へこたれたりしているのだが、ボクサーたちはやはりウイン
ドブレーカーなどを着て頑張っている。見栄とか、見せかけのガッツではない、
本当のガッツにあふれた人たち。試合の重圧の中で厳しいトレーニングに身を
置く彼らの、鋭くキレのある動きは、迫力があってすげえかっこよくて、清々
しい。

 12、3年前に新品で買ったエレキギターが、やっといい音がしてきた。買
ったばかりのときは、シャラシャラしててなんじゃこりゃって音だったのだけ
ど、最近はゴツゴツしてきてなんかいい感じで、まるでギターが熟成されてき
た感じ。ワインはあまり飲まないので、熟成とかそういうのはよくわからない
のだけど、でももしワイン好きになったら、やっぱり何年か経ったワインをぼ
くはおいしいと思うんじゃないかな。
 バイクには「慣らし運転」というのがあって、新車購入後1000キロくら
いまでは乗り手が穏やかに乗ってバイクを最終的に仕上げてあげなきゃならな
い。あのエレキギターも10年経ってやっと「慣らし」が終わった感じかな。
 ぼくはずっと若いときから、どちらかというと、新しいモノよりも古いモノ
の方をより好む傾向があった。音楽も50年代から60年代、70年代の古い
音楽が好きだったし、最近は80年代の音楽もいい感じに聴こえてきたりして
いる。楽器や録音機材にいたっては、もう絶対古いものじゃなきゃ嫌だ、と言
わんばかりでさ。サックスやエレキギター、アコースティックギター、マイク
ロホンやイコライザーなど、みんな古いヤツが好きだな。こういったことはぼ
くだけじゃなくて、けっこういろんなミュージシャンからも聞くことなのだけ
ど。あるサックス研究家が、古いサックスがなんでいい音に聴こえるのか、古
いサックスと新しいサックスの金属を電子顕微鏡で覗いたら、同じ種類の金属
なのに、なにやら原子の配列が違っていた、なんてひどくあやしい話も聞いた
ことがある。
 なんで古い楽器や機材を良く思うのかは、ぼくにとっては勝手な理由が二つ
あって、一つ目の理由は、例えばエレキギターに関していうと、古いストラト
キャスターはギターアンプから聞こえてくる音はもちろんいい音なのだけど、
アンプにつないでいない、チャラチャラした生の音がすでにすげえ良かったり
する。ぼくの勝手な予想では、エレキギターが作られ始めた当時は、アコース
ティックギターを作っていた職人がストラトやテレキャスも作っていて、だか
らギターとしての鳴りをちゃんと考えて丁寧に作っていたのではないか。つま
り昔の職人は実際やっぱりかなり腕が良かった、昔のモノは、腕のいい職人に
気持ちを込めて作られていたんじゃねえのか?ということ。
 そして二つ目の勝手な理由は、人間の耳は、モノが古くなった音、響き、振
動を、感知する能力があって、その、モノがちょっと劣化した響きがぼくの好
みである、ということ。
 楽器とか、音楽に、無意識的に時間の経過を感じることが、ぼくの好みなの
かな。



   
     
2009.6.8(月)               文:田島貴男    
     
     
 立川談春と柳家喬太郎の二人会ヘ行ってきた。
 前座は喬之進で「金明竹」。なにを言っているのかわからない大阪弁が出て
くる、あの噺。あれはどうやったら憶えられるのだろう。どれくらい練習した
らあれほど早くしゃべれるようになるのだろう。
 喬太郎は「井戸の茶碗」。この日の喬太郎はいい調子でマクラが長くなった。
その分、噺の終いのほうを急がなくちゃならなかったのが惜しかった。いつも
のことだが芸が達者で、緊張と緩慢の使い分け方がすごい。キャラが時に変態
的になったり、たまに漫画っぽくなったりするところなど、喬太郎節が冴えて
いた。彼はブレイクして、お客さんがウケ過ぎて、ウケ過ぎるお客さんに彼自
身がどう対処していいか迷っているような感じがうかがえる時期があったのだ
が、昨日はそういった迷いが感じられず、なにか吹っ切れたように見えた。ユ
ルく装いつつも共演が談春ということでやはり気合いは入っていたのだろう。
久しぶりに素直に喬太郎を楽しめた。
 談春は「寝床」。ドラえもんの、ジャイアンリサイタルのネタになったとい
う、あの噺だ。談春の噺を聴くのは二度目で、一度目は時間が短かったから、
ちゃんと聴くのは初めてだった。ついこの間、円生の「寝床」を聴いたばかり
だったから、違いがいろいろ分かって面白かったな。談春の「寝床」は、長屋
の主人の義太夫を聴く苦痛の場面よりも、住人が主人につく「嘘」をバリエー
ションをつけて膨らましていて、人間の「ずるさ」、「汚さ」を、面白く、ば
からしく、巧みに演じながらも、どこか温かい目で見ているような感じがあっ
て、とても良かった。談春はまた見に行きたいのだけど、チケットがなかなか
手に入らないんだよなあ。



   
     
2009.6.5(金)               文:田島貴男    
     
     

 今日もツアーのための個人練習。歌を歌ってギターを弾いて。
 ここのところ週末が近づくといつも雨だなあ。今週はツーリングに行けるか
微妙な天気だ。雨でも行くか、それとも883のエアクリーナー替えたり、ク
ラッチワイヤーにオイルさしたり、その他細かいところの整備でもするかな。
 木の陰で雨宿りしているカラスみたいに、窓の外の雨を見上げながら、読書
したり音楽を聴いて部屋で過ごすかな。むかし飼っていた柴犬も、雨の日は犬
小屋から顔を覗かせて雨の降ってくる灰色の空を見上げていたなあ。

 

 

   
     
2009.6.4(木)               文:田島貴男    
     
     

 曇り空が多くなってきていよいよ梅雨の季節に入ってきたのかな。朝、バイ
クを洗ってアトリエに来た。HOT STARTER 09の練習を始めている。
 昨日は取材を受けていて読書とネットサーフィンとの違いのことをすこし考
えたりもした。
 それで渋谷と原宿の街を車で通りかかったのだけれど、以前よりも増えたな
あ!自転車に乗る人が。車の両脇から男女の自転車がすり抜けて行ったり。ブ
ームになっているようだな。実はぼくも、みんなが乗っているあのBMXのよう
な形の自転車を新しく買って乗り回そうかなと考えていたところだった。バイ
クに乗る時のトレーニングにもなるし、いいかなと思っていたのだけど、あれ
ほど流行っているとは知らなんだ。
 発売前はあれほど欲しいと思ったiPhoneもまだ買ってない。絵文字も使わな
いし。流行があったりとか、みんなが同じことをやりだすと、自分は様子を見
てみたくなるような、人と違うことをしてみたいというような、ちょっと捻く
れた気持ちが働いてしまうのが、ぼくの昔からのしょうがねえ性分なんだな。
これがプラスに働くことも、マイナスに働くこともあるんだ。自転車の場合は
どうかな。楽しそうだし、買ってしまうかもな。

 

 

 

   
     
2009.6.3(水)               文:田島貴男    
     
     

 昨日、帰宅途中に聴いたビートルズの「アビーロード」がこころに染みたな
あ。「アビーロード」は、ぼくとしては正直に言うとビートルズの中ではそん
なに好きなほうのアルバムではなかったんだけど、昨日は今まで生きてきて一
番グッときたな。なんでかな。
 この頃のビートルズはその後に発表されることになる各自のソロアルバムの
特徴を寄せ集めた感じで、ポールのソロアルバムにも似ているし、ジョンのプ
ラスティック・オノ・バンドにも似ているし、ジョージのソロにも似ている。
 このアルバムはビーチ・ボーイズの「スマイリースマイル」などのアルバム
の影響が感じられるなあ。このアルバムは他のアルバムに無い妙なかなしさが
ある。気怠さがある。引っ掻き傷のようなものがある。ビートルズのアルバム
の中では「ホワイトアルバム」よりも、「サージェントペパーズ」よりも、最
近のオルタナティブロックのようにぼくには聴こえるんだな。
 バンドの状態は決してよくなかったみたいだけど、「アビーロード」は見事
な仕上がりのアルバムになっている。映画「レット・イット・ビー」を観ると、
彼らがやる気をなくしている様子が所々に映っている。仲の良かった四人のこ
ころが離れていっている。4人が大人になって、もうそれぞれのプライベート
な生活が始まってて、以前のようにバンドにばかりかかりきれなくなってきて
いる感じ。ポールがそんな状態をなんとかしようとしていろいろアイデアを出
すのだけど、次々に失敗していっている。バンドを経験した者なら心当たりが
あるような状態かもしれない。それでも「アビーロード」は良いアルバムに仕
上がっていて、彼らの音楽の才能の豊穣さを、4人が集まったときのマジック
を、このアルバムは物語っていて、すごいんだな。
 ビートルズを聴いてもなんにも感じない時がある。音楽が自分にあまり入っ
てこないときがあって、反対に、音楽がどんどんこころに響いてくるときがあ
る。昨日は響いてくる状態のときだった。だから「アビーロード」の素晴らし
さに気付くことができた。昨日は季節の変わり目の日だったのかな。

 

 

   
     
2009.6.2(火)               文:田島貴男    
     
     

 今日は暑いですね!みなさんお元気にしてますか?
 ここのところ初心にかえるという意味もあって初期の自分の音楽を聴き返し
て Voiceにいろいろ書いていたのだけど、今度のライヴが全般的に初期のレッ
ドカーテンみたいになってしまうということはまずないので、初期のレッドカ
ーテンのファンの皆さんにはすこし申し訳ないけれども、デビュー後のオリジ
ナル・ラヴのヒット曲とかその他諸々を期待している皆さんはどうぞ御心配な
く。と言ってもレッド・カーテンの薫りは多少するかもしれませんがね。とに
かくやれる曲は限られているのでね。ひとつよろしくお願いします。
 初心にかえっても自分が若返ることはけっしてないので、現在の進化した自
分にしかできない楽しさ満載のライブにしたいと思っています。新曲も何曲か
やるつもりです。みなさんぜひ遊びにきてください!

 

 

   
     
2009.6.1(月)               文:田島貴男    
     
     

 久しぶりに朝早くから一人でツーリングに行って来た。バイクのツーリン
グはみんなで行くのも楽しいけれど、一人で行くのもやっぱり楽しいな。自
分のペースで、ゆっくりまったりと、甲斐駒ケ岳を観に行こうと思ったんだ。
 前日から天気をチェックしていて雨が降ることは分かっていたが、かまわ
ず朝7時に出発。中央道石川パーキングエリアで雨合羽に着替えて、相模原
で降りて上野原から山の中のグニャグニャ道を行く。ここのところ883で
街乗りばかりしていたから、悪い癖みたいなのがついていたが、峠を走って
いるうちに次第に調子を取り戻した。深い緑に覆われた奥の細道は、雨のせ
いもあってガラガラ。深呼吸するようにゆっくりぐねぐね、883で走って
ゆく。
 小菅からいつもの411を通って柳沢峠へ。雨は降ってもにわか雨程度で、
夏の豪雨のようではないから走りにくくはない。甲州街道へ出て甲府市街を
抜けるころには空に晴れ間さえも見えたが、そこから先は雨が降っていた。
 韮崎へ出ると、思った通り、黒々とした影に染まった甲斐駒ケ岳は腰から
上に薄紫色の雨雲を冠っている状態だったが、それでも圧倒的な眺めである
ことには変わりはなかった。川が何万年もかけてえぐった広大な盆地の眺め
を横に見つつ、七里が岩ラインのゆるい坂をゆっくりまったりぐねぐね登る。
 目的地である長坂でバイクを停めたかったのだが、ガソリンランプが点い
て、予定していた長坂周辺のスタンドがどこも休みで、落ち着くことができ
ず、韮崎まですぐに戻ってきてしまった。
 甲府市街のファミレスで昼食。いつか行った石和温泉に立ち寄ってみよう
か迷ったが、もう少し峠を走ってみたくて甲州街道勝沼を過ぎて甲斐大和か
らふたたびぐねぐねの奥の細道へ。
 山を登ってゆくと深い霧に包まれたが、慌てずにゆっくりぐねぐね。88
3は泥をはじきながら快調にエンジンをぶるぶるいわせた。細い下りのぐね
ぐね道の途中から、いつものでこぼこの舗装路が工事をしていて未舗装路に
なった。しかも雨でぬかるんでいてマディ状態である。270キロの巨体に
ブリジストンBT-45のタイヤを履いた883を、こかさないようにそおっと
走らせた。この日のクライマックスだったが、オフロードコースでの経験が
生かされて慌てずに走ることができた。
 以前「スポーツスターってオフ車に似てませんか」って883の師匠に質
問したら、「883はオフ車です」と言い切っていたことを思い出す。88
3に乗っていなかったら、オフロードに興味を持たなかったかもしれない。
ぼくはオフロードでバイクに乗ってみて、バイクって面白いなと思い始めた
んだ。
 3、4百メートルで舗装路に戻り、その後は深い霧の中の柳沢峠、奥多摩
周遊を通って帰ってきた。バイクはひとりの時間を楽しませてくれる。そう
いうところは音楽と同じだ。泥だらけになった883がまたかわいく見える。

 

 

 

   
     

 

 

   
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